漢方薬と便秘
漢方では昔から、大小便の状態を重要視してきました。
現代のように血液検査や胃カメラなどの無い時代、「便」は文字通り、体の中の状態を知らせてくれる「お便り」であったわけです。
昔から、健康の大便とは・・・
1.毎日1回、規則正しく出る
2.色は黄色っぽい
3.殆ど臭わない
4.バナナ大で2~3本
5.硬からず柔らかからず
6.形はバナナ状
・・・と言われています。
毎日、便通があっても色が黒っぽかったり、臭いがきつかったり、スッキリと出なかったりするのは問題があります。
♥便秘にはいくつかのタイプがあります・・・
①弛緩性便秘・・大腸の緊張が緩くなって、なおかつ蠕動運動も弱いというタイプです。
②直腸性便秘・・便が直腸まで達しても、便意を感じないタイプ。
③痙攣性便秘・・ストレスなどで腸が痙攣することで便の通過が障害されるタイプ。
♥漢方でも便秘に関して、体質的な要因と合わせていくつかに分けており、代表的なものを挙げると
①「熱秘」
もともと熱エネルギーが余っている様な陽性体質が、お酒や香辛料、脂っこいものの摂りすぎで、胃腸の中に余分な熱が発生し、腸の中に潤いがなくなったタイプです。
②「気秘」
精神的な緊張やストレスによって、消化管の運動をコントロールしている「肝気」が滞ることで、腸の蠕動運動がスムーズにいかなくなって発生します。
便秘以外にも、イライラする、胸や脇が張る、ため息が出やすいなどの自覚症状を伴います。
③「虚秘」
脾気不足~簡単に言うと、胃腸のパワーが低下した状態で、腸の蠕動運動が低下したり、腸内の潤いが不足するために生じる便秘です。
普段から疲れやすいという方で、数日間排便がなくても腹部に苦痛を感じることもないというタイプです。
また、排便時に汗が出てきたり、息切れし、排便後に脱力感を伴うことが多く、時に脱肛を伴うこともあります。
④「寒秘」
冷え性で体質が虚弱な老人に多く見られ、胃腸が冷えていることと、頻尿や夜間多尿を伴いやすく、結果的に便に潤いがなくなって余計に排便しにくいというタイプです。
漢方的には「腎陽虚」といわれる症状、すなわち冷え症で、膝や腰の痛み、耳鳴りなどを伴う。
⑤「血虚・陰虚」
出産後の女性や、もともと貧血気味の方など、「血」の不足が原因で、腸内に潤いがないというタイプ。
または、陰虚と言って、手や足の裏がほてりやすく、お肌も乾燥しがちな体質の方で、腸内に潤いがないタイプ。
以上、漢方的に分類した代表的なタイプをあげましたが、
特に「気秘」と「虚秘」のタイプの方は、一般的な下剤を用いると、腹痛を伴ったり下痢してしまうことが多く、適切な漢方処方を選ぶ必要があります。
よく、数日に一度、新薬の刺激性の下剤を使うという方がおられますが、
便秘~数日ガマン~下剤というパターンを繰り返していると、だんだんと新薬の量が増えてきたりするばかりでなく、便秘そのものが治るということにはなりません。
便秘を解消するには、体質に応じた漢方処方などを用いながら、先ずは毎日お通じがあるように習慣づけていく必要があり、
その後ある程度排便習慣がついてきたら、食物繊維や乳酸菌などのサプリメントに切り替えつつ、自然な排便リズムを回復させていくことをお勧めいたします。