漢方薬と胃の症状
漢方では「脾は後天の本」とされ、五臓六腑の「脾=胃腸」の消化吸収機能がちゃんと働くことが健康を維持するために最も重要であるとされています。
胃腸の調子が悪いと、いくら栄養のある食べ物を食べてもカラダに吸収されないばかりか、
「気」のエネルギー(言葉をかえれば抵抗力や免疫力)の低下にもつながり、様々な疾患の遠因ともなります。
現代医学では、胃の粘膜の炎症やポリープなどがなければ特に病気ともされませんが、
胃腸に関しては、その機能が正常に働くことが最も重要であり、胃腸の機能面の異常に対しては胃カメラなどの検査ではわかりません。
漢方では昔から胃腸の機能が乱れた時にどのような自覚症状が発生するのかということを細かく分析すると共に、
それぞれの自覚症状に対して適した漢方処方が用いられてきました。
胃痛や胸やけなど代表的な胃の不快な症状に付随して起こる様々な自覚症状を挙げておきますが、
それぞれのパターンだけでなく、その方の体質によって用いられる漢方処方は異なります。
♠胃の痛み
①ストレスで普段からイライラする、或いは憂うつ感がある。胃がつっぱるように痛む。
②突然の激しい胃の痛み。生唾がわいてくる。温めると痛みが和らぐ。
③くさいゲップが出る。胃の膨満感が強い。
④空腹時に胃の痛みが強く、食べると楽になる。手足が冷えて、時に吐き気がする。
⑤胃に慢性的な鈍痛があり、口が渇きやすく、空腹感があっても食べられない。
⑥胃が引きつるように痛む。食欲がなく、食べると胃が張る。
⑦胃の同じ場所に刺すような痛みがある。夜間に痛みが強くなる。
♠胃のつかえ
①臭いゲップが出る。胃や胸が張って苦しい。あまり食べたくない。
②カラダが重だるい。時にめまいがしたり、痰が出るまたは口の中が粘る。胃の膨満感と共に吐き気がする。
③胸や脇のあたりが張ったような感じがする。イライラしたり、憂うつ感がある。
④食欲があまりなく、食後に胃のあたりがつかえるとともに、眠たくなる。どうかすると軟便になる。
⑤手足が冷たく、胃のつかえだけでなくシクシク痛むことがある。
♠急な吐き気
①悪寒や発熱、頭痛などを伴い風邪を引いた感じ。
②暴飲暴食で吐き気がして、臭いゲップを伴う。お腹が張って痛む。
③お酒を飲むと頭痛がして吐き気がする。脂っこいものが鼻につく。
④乗り物に酔いやすく、吐き気がする。
♠慢性的な吐き気
①緊張感やイライラする時に吐き気がする。胸や脇、お腹が張る。
②よく吐き気がして、水様物を吐く。胃がグルグル鳴り、膨満感もある。
③食べられない、食べると吐き気がする。胃が張って、生唾が多く冷え症である。
④吐き気や空えずきがする。空腹感はあるが食べられない。
♠胸やけ
①口が渇いて水分が欲しくなる。口臭やゲップを伴う。
②胸やけが起こったり止んだりする。唾や涎が多い。
③胸やけとともに口が乾燥し、水分が欲しい。空腹感があっても食欲はない。
④時々胸やけがする。動悸や立ちくらみ、不眠がちで、顔色も悪い。
♠食欲不振
①食べる気がしない。イライラして精神不安。胸や脇が張ったような感じがする。
②吐き気、嘔吐、口の中が粘る。軟便気味でスッキリ出ない。カラダが重だるい。
③空腹感はあるが、食べ物がノドを通らない。胃が張って疲れやすい。
④空腹感はあるが、食べ物がノドを通らない。口が渇いて水分が欲しくなる。
⑤空腹感はないが、食べることはできる。お腹や手足が冷えて、軟便がち。
⑥空腹感はないが、食べることはできる。手足がほてり、唇は乾燥する。