漢方薬とストレス・睡眠障害
ストレスと睡眠の関係について、それも、自分自身ではなかなか自覚しないような睡眠障害についてお話します。
ストレスが原因となる疾患は、うつ病などの精神神経疾患をはじめ、胃腸疾患、頻尿(神経性前立腺炎)などから高血圧などの循環器系疾患、
喘息などの呼吸器疾患、糖尿病などの内分泌代謝疾患など様々ですが、いずれにせよストレスが発生したときに真っ先に影響を受けるのが、睡眠です。
ただし、睡眠障害と言っても初期においては殆ど自覚されることがないのが特徴です。
というのも、なかなか寝付かれないとかではなくて、夜中にハッと目が覚めるという形で起こるからです。
人間の睡眠のリズムは、寝入りばなと呼ばれる深い眠り(ノンレム睡眠)になってから、浅い眠り(レム睡眠)と深い眠りが交互におとずれ、
やがて朝を迎えて目覚めるというのが自然な形とされています。
ところが、昼間
ストレスを受けるとレム睡眠と呼ばれる浅い眠りの時(半覚醒状態とも呼ばれており、体は眠っていても神経は休んでおらず、夢を見るのもこの時です)に、
昼間のストレスが脳裏をよぎって神経を緊張させ、全身に力が入ったりしますが、緊張のレベルが強くなると、ハッと目が覚めたりすると言われています。
また、この様な時には目が覚めないまでも緊張が持続して、ノンレム睡眠と呼ばれる深い眠りに入ることが出来ず、そのまま朝を迎えるという事にもなります。
この様な睡眠の状態が続くと、体の疲れがとれないとか、朝起きた時から首の後ろあたりが凝っているということになりますが、
例えば夜11時に寝て、朝7時に起きているのであれば、8時間は眠ったということで、問題はないと思われる方が殆どだと思います。
ところが、睡眠の質ということから考えると、この様な眠り方をしていると様々な問題が発生します。
実は、人間の睡眠に関する研究では、深い眠り(ノンレム睡眠)の時にだけ成長ホルモンが分泌されるということがわかっています。
すなわち、質の悪い睡眠では成長ホルモンの分泌が低下してしまいます。
「寝る子は育つ」という諺があるように、睡眠と成長ホルモンには密接な関係があるわけですが、この成長ホルモンというのはなにも子供が成長する過程でだけ
必要とされるものではなく、成人してからも非常に重要な役割をになっています。
♥成長ホルモンの働き
・皮膚の張り、弾力性がよみがえる
・タンパク合成を刺激して、筋肉量を増加させ、体脂肪を減らす
・骨密度の増加
・運動能力、持久力の向上
・免疫能の向上
・内分泌腺に影響を与えたり、成長を促進する。
・性機能の向上
すなわち、睡眠の質が悪くて、十分なノンレム睡眠の状態がないと、いくら長時間寝たとしても、体の疲れがとれないばかりか
健康に対して様々な弊害が生じると言うことです。
反対に睡眠時間が短かめでも、ノンレム睡眠が十分あれば健康を保っていられると言うことです。
更にストレスの影響によって睡眠の問題以外にも起こりやすい症状としては・・・
・心電図では異常がないが動悸がする
・落ち込んで何もする気がわかない
・何となく息苦しく、ため息がでる
・ちょっとしたストレスでお腹の調子が悪くなる
・・・などといった症状が発生しやすくなります。
また、昼間この様な症状が出る方は、夜もグッスリ眠っているとは思えません。
漢方では、この様な症状~ストレスによって、「気」の流れや睡眠リズムに変調をきたした時に、速やかに「気」の流れを整えて睡眠状態を改善してくれる
高貴薬として「麝香(じゃこう)」が知られています。